1・2・3新聞(アン・ドゥ・トロワしんぶん)37

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第37号 ハグの暖かさ(2020/06/30)

毎日雨が降っているような気がする今日この頃ですが、6月28日のこの日は一日中快晴。週間天気にぽっかり日が差し込んだような、うれしい一日でした。晴れたら晴れたで、蒸し暑さは格別になってきますが、私は朝から洗濯物をここぞとばかりに洗いまくるのでした。

そんな日の午後、ホスピスケアをすすめる会の総会へ伺いました。

お元気でしたか?とやさしくお声がけしてくださる方々や、久しぶりに集まった皆さんの表情が、マスク越しではありますがとてもお元気そうで、私はうれしくなりました。以前お会いした頃はコロナの前だったこともあり、マスクが通常、ディスタンスは当たり前になった今、改めて人の集まる場に行くと、世界ががらっと変わった後のような、なんだか不思議な気分にもなりました。

そんな中、総会が始まり、医療関係者の方々が多いこの会では所々に、現場にいるからこそ、ニュースでは流れないような実情が飛び出してくることもありました。

緊急事態宣言中の手術について、患者さんと家族の面会について、コロナの中で向き合う家族の病気や死について、など。目に見えないコロナへの対策が施される中、より大切に感じること、より嘆かわしく感じてしまうことが出てきたような気がします。そんな現場でのお話を聞きながら、体験を言葉にすることで、誰かに伝えることで、みんなで今を共有することが何より大切なことだと、感じました。

夫は今年でちょうど7回忌。と和やかにお話を始めた奥様。これだけは本当に聞いて欲しいの、本当に何回もの励ましの言葉より、一回の、たった一回の友人のハグが私を溶かしてくれたの。ハグをしてもらった日、もうぽかぽかして、寝るまでずっと暖かかったわ。

人間は人との関わりがないと生きていけない。人と関わることは、もちろんこんなご時世でリモートでだってできることはわかったけれど、でも、本当の交流は実際に同じ空間で、言葉はなくとも手を取ったり、ハグをしたり、暖かさと暖かさを通わせることで心が通うのでしょう。心が通うと、水をもらったかのように心が満たされてくるのです。人間は動物。暖かさを分け合える動物。お母さんやお父さんに抱っこしてもらっていた記憶をずっと大切に持っているから、大人になっても暖かく触れあい、誰かにぎゅっと大切に抱きしめてもらいたい。そして、自分が今生きていていいんだ、生きているんだなあ。と心から生に対して肯定できる気持ちが生まれてくるのでしょう。コロナ禍と言われる昨今、ふれあいやハグは逆行しているようなことかもしれません。そして、特に日本人にとっては、コロナと言われる前から、スキンシップにはハードルがあります。でも、今だからこそ心を通わせることは、とても大事なことなのではないでしょうか。

コロナの前と後、人間はAIのような感覚と本来の動物である感覚との狭間にいるような気がします。可能なことは増えたけれど、不可能なことも増えている気がします。できる限りポジティブな感覚で、可能が増えた喜びを味わい、不可能になったことを乗り越える、または、不可能を可能に変える方法を築き上げようとするファイトを持ちたい。ディスタンスを保ち続けた末路に揺れ動く心は、一体なぜ揺れ動いているのかさえ、一人ではわからなくなってきます。触れあうことで心が通い、エネルギーに満ちあふれた人間本来の姿を見たようで、本来の姿を大切に、生きるものとしての取捨選択ができる人間でありたいと思った時間でした。

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